2018年に観て最高に良かったアニメ映画4選(とおまけ1)

というわけで、2018年はアニメ映画をたくさん観て良作が多かったのでアニメ映画で良かったのを4つ選びました。完全ネタバレなしで書きます。
なぜ4選かって言うと洋2邦2でなんとなく収まりが良さげだったから。

ちなみに映画館で観た映画のうちのアニメ特撮率はちょうど半分くらいだった。
先に書いておくと、アニメを除いた映画でベストだと思ったのは「ボヘミアン・ラプソディ」、「スリー・ビルボード」、邦画では「万引き家族」あたりです。この上に絶対的王の中の王として「バーフバリ 王の凱旋<完全版>」がある。
バーフバリは王の中の王であるが実は2017年12月27日公開だった(俺は1月2日に観た)という事情があるので夏に公開された完全版にしときますが、いずれにしても今更わざわざ書かんでも……みたいなカッチカチなセレクトになったので、今回は佳作が多かったアニメのことを書こうと思いました。

ではさっそく行ってみよう。

4位:シュガー・ラッシュ:オンライン


年越し正月も公開中のヒット作。

まだ公開中なので内容については一切触れずに思ったことを書く。

4位と言っておいてあれですが、結構危ういバランスで成り立ってる映画だなーという印象があり、評価が難しい作品ではあります。実際に評価はかなり割れている。
俺は前作を観て泣きながら80年代~90年代の走馬灯を見たゲームキッズ出身の大人なので、その良いイメージが前提にあって良い評価をしているというのは認めます。

それでも、俺はこの映画がやっぱり大好きだし、素晴らしい作品だと関心せざるを得なかった。
この作品がひとつのテーマとして取り上げているマルチメディアの文脈において、前作が80年代~90年代のテレビゲーム少年少女20年の成長を2時間に圧縮した映画だとすれば、今作はその後の00年代~10年代を2時間に圧縮した映画だ。今アラフォーのインターネットおじさん(お姉さんも)は、自分の人生を2時間×2の圧倒的エンターテインメントの中に叩き込まれた威力に叩きのめされ、感傷に浸り、胃がキリキリし、涙するのでしょう。

そう、ディズニーのアニメーションでありながら、本当のコアなターゲット層がどこなのかがよくわからないというか、「これ、大人向けだよね?」みたいになりがちな映画じゃないかと思います。ディズニーの文法に従ってすべての世代、すべてのジェンダー、パーソナリティが皆楽しめるように緻密にマーケティングされた構成ではあるのだけれども、シュガー・ラッシュはわりと日本的なオタク手法というか、コアな趣向で突っ走っている映画なんじゃないか。

“ゲームとITの思い出”みたいな細分化された趣味嗜好だけではなく“現代のコミュニケーション”とか“友情”とか“成長”とか“家族・男女の関係性”とかあるいは“ダイバーシティ”のような普遍的なテーマにフォーカスしても、それぞれが一流の作品として成り立つように作ってあるところはさすがだなあと思います。しかし、「刺さる人」にはストライクで刺さるし、刺さらない人には刺さらないかもしれない、という状況が発生しやすい内容だろうなあとは感じますね。

で、俺は「刺さる人」です。むしろサクッと刺さって痛い痛い。Pinterestのピンまで刺してくるぞ気をつけろ。正直、インターネットを仕事として生きてきた人間としては、思い出に泣きながら観た前作とは違って、完璧に擬人化・グラフィック化されたお仕事の世界のあるあるや、ツッコミどころが見ててキリキリするようなところがございました。

評価が割れているのは、「刺さらない」層がいることも明確な映画だからだと思われます。むしろ、「ディズニー的なもの」が大好きで、ディズニーにディズニーたるディズニーの夢を求めているディズニーファンにこそ、「私がディズニーに求めていることはこれじゃない」となってしまうであろうということは容易に想像できる。

前作もそうだったし、主要スタッフが同じチームで制作された「アナ雪」「ズートピア」もそうだったけど、「ディズニー的なステレオタイプ」を内部からぶっ壊しに掛かるような構造なんですよね。大量に埋め込まれたメタネタもそうだし、明確な悪役がいなくて祟り神的な、あるいは鉄雄的な、自分の弱さから生まれたモンスターと向き合うようなラストもそのように感じます。

この制作陣(リッチ・ムーア監督と脚本のジェニファー・リーさん)は社会的要素を組み込むことで前作以来度々話題になっていますが、大の大人が「これ、大人向けだよね?」って言っている一方で、10代20代の若者が「子供向けすぎてつまらなかった!」って言っていたりする光景は、多様性ある議論を提供していることの証左だと思います。

ネットの小ネタメタネタが大量なのでその辺についても話したくなるんだけど、その辺は世界中の人が話題にしているので今回はこの辺にしときます。語ることがたくさんある映画ですよ。

3位:ペンギン・ハイウェイ


これはいい映画だなぁー。大好き。

森見登美彦原作の映画化ですが、湯浅政明監督の「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」よりもこっちのほうが好きです。個人の感想だけど。

夏休み後半の映画だけど、東宝はなぜこれを夏休みアニメとして一押しプッシュしなかったんだろう?理解に苦しむ。いや、理由はわかってるんですけど、プッシュするんならこっちのほうが……
いやほんと、露出が少ないのが悔やまれる佳作、秀作、良作でありました。

いやー、なんて素晴らしい少年の想像。
少年の好奇心と夢と冒険を真正面から描くことがなんと尊いことか。
そんなことを感じてとっても清々しかった。ジュブナイルとして言うことのない作品です。SFを期待してイチャモン付けたりするのは野暮ってもんですよ。

森見作品らしい文学青年調の語りが映像化されているのだけれど、若い制作陣が良い仕事をしていることと相まって良い意味で肩の力が抜けた爽やかな作品に仕上がっていますね。

裏山の謎、天気の謎、宇宙の果てと世界の裏側、お姉さん、お姉さんのおっぱい。
これらはすべて等しく少年の夢と冒険を駆り立てる世界の謎であり、謎がたくさんある世界はワンダーランドなんですね。おっぱいには世界と少年の夢が詰まっているし、むしろ少年の夢はおっぱいだと言っても過言ではない。最高だ。

結構シンプルというか定石に則った演出、脚本ですが、新鮮なカメラワークがあったりして長い時間観ていて飽きない作品です。

声優も、音楽も自然でとても良い。お姉さん役の蒼井優の演技が白眉です。
「『少年』が考える素敵なお姉さんの声」ってたぶんこういうことなんだろう、っていう説得力がある。ちょっとかすれた飾らない声は、媚びず、引かず、いやらしさもなくどこまでも純粋な少年の好奇心を引きつける魅力がありますね。

このお姉さんは栄えある2018年のお姉さん・オブ・お姉さん第1位に認定します。

2位:犬ヶ島


ウェス・アンダーソン監督のストップモーションアニメ。

強烈。狂気を感じる。監督の過去作品どれもそうだと思うんだけど、これについてはどうこう語るよりか実際観てもらったほうがいいよね。なのであまり書くことも無いのですが。

なんという完璧狂人なのでしょう。ほんと1ミリ1秒のムダも無くバッキバキに作り込まれた映像におののきます。まじで全部パペット動かしてやってんのこれ!?狂ってない?

犬たちが主人公で、近未来ニッポンにおける猫党の市長にゴミの島に隔離された犬たちが愛犬家の少年と圧政差別をひっくり返す、みたいな実に2018年のトランプ問題的なストーリーなのですが、キャラクターに吹き込まれた命や世界を構成する細部の映像が本当に素晴らしいですね。この辺はYoutubeに公式のメイキング映像がいくつか上がってるので(映画観た後)観ると良いですけど、実際作業工程も狂ってた。CG使ってないの?とか陳腐なこと言いたくなります。

ウェス監督の作品は世界の構築が本当に優れていて、「年代不明のケレン味あふれるサイバーでサムライなニッポン」の絵を作るのが本当にうまい。背景だけじゃなくて、テロップのフォント、各国語でそれぞれしゃべる声優の掛け合い、それらすべてが「犬ヶ島」に連れて行ってくれる。映画というフォーマットを借りた四次元的アートだよね、これ。

マニアックな作風なので、ネットでは「サムライゲイシャの勘違い日本」とかって言われたりしているのをちらほら見かけるのだが、この監督について言えばどう考えてもわかっててやっているとしか思えません。それくらい情報要素が多い。日本好きな監督が、現実どういう国か知っていた上で、「勘違いニッポン」の文脈を取り入れつつ多方面に社会風刺をやるっていう高度な芸風ですよ。

この作品は一作通じて終始黒澤映画へのリスペクトに溢れたことになっている(ていうか七人の侍のテーマとかがそのまんま流れる)んだけど、「西部劇をオマージュした黒澤映画をオマージュする」みたいなハイコンテクストなことをやりつつ全く鼻につかないように自分の作品に消化しててすごいと思いました。はい。

とても気に入ったので繰り返し観に行ったんだけど、アニメ作品ではこれが今年一番かなーって思ってたよね、秋まで。

1位:若おかみは小学生!


神。

驚愕の圧倒的鬼クオリティ。超絶技巧の塊。最高の仕事である。
2018年のアニメ映画No1は若おかみは小学生!。文句なし。
アニメ映画の、と言わず2018年の邦画No1も俺はこれを推す。万引き家族でもカメ止めでも孤狼の血でもなく若おかみだ。俺はそれくらいやられた。
まだ観ていない諸氏は今すぐ観ろ。観てくれ。観てくださいお願いします。まだやってる劇場もあるのでできれば劇場がいいです。それだけの価値はあるよ。

プチヒットしてそこそこ有名になったけど、それでもなお全然知られていないので世界へ向けて発信し続けなければならぬ。人類は今すぐ若おかみである。

「若おかみは小学生!」は小学校の図書室によく置いてあって女の子がよく読んでいる児童文学で、ウチの子も小学生の頃読んでたよねそう言えばっていう感じだったんだけれど、さすがに40超えた男がひとりガラガラの映画館で泣きすぎてガクブルする羽目になるとは思わなかったし、大半の人類はそう思っていないはずなので布教が必要だと思う。

一秒のムダも無い脚本と神懸った作画、スタジオジブリを支え続けたエース陣が本気出すとこうなるのかと関心する。ガチ映画ですよ、これ。

俺は公開2日後に観たんだけど、びっくりするくらいガラガラでした。
ちなみになんでこれを観たかというと、以前から元々監督の高坂希太郎さんの大ファンだったからです。もののけ姫や千と千尋の作画監督で、宮崎駿監督の右腕と言っても良いアニメーター(あと、自転車が超速い)。「衝撃を受けた」と言うよりは、「ああ良かった、このアニメーションを観る喜びをこれからも体験できるんだ」っていうホッとしたような気持ちが大きいかったかもしれない。

ジブリっぽさがどうこうで語ることには何の意味も無いのだけれど、二次元的な絵柄であるにも関わらず体温を感じられるようなキャラクター、自然の息吹が見えるような背景、味と香りがする料理にプロの作画を見ました。
上に書いたディズニーと同じように、「真の子供向けとは大人の鑑賞に耐えるものだ」という理念を詰め込まれたような骨太で多面性のあるストーリーがあり、それがたった90分にパッケージされている。

表面的には傷を負いつつも頑張っている少女の成長物語、と表現できる物語なのだけれども、児童向けのイラストの裏には潜在的に生と死、死と再生という概念が埋め込まれており、なかなかえぐい、しかしそれでいてコミカルと笑顔を失わない凄まじい映画でした。
幽霊や鬼といった愉快な友達たちも、少女の成長を助けつつ大人になると去っていくという、様々な解釈ができる繊細なキャラクター設定がされている。それに、頼れるお姉さん役の占い師のグローリー水領さんがなかなか素敵おねえさんで、2018年のお姉さん第2位を獲得です。

主人公のおっこは小学生ながらにして「若おかみ」という職業の名を身につけるのだけれど、
登場人物の類似性からみても「高坂監督版魔女の宅急便(※)」とも言えなくもないし、監督自身が作画監督を務めた「千と千尋」からさらに先を描いた映画であるとも言えますね。
※高坂監督は魔女宅には関わっていないとのこと。

この「肩書」の構造は本当によく出来ていて、本来の読者層である小学生にとってはちょっと背伸びした憧れのアイドルに見えるし、子どもたちを見守る大人たちからは、おっこの努力や奮闘の形に見えるようになっているわけです。さらには、生と死の間にいたおっこへ、新しい命を吹き込む役割を担っていたりするわけです。仏教か。

「若おかみは児童労働!」とかって茶化したりする人がいるが、まったくもって筋違いというかアホですよ。

高坂監督は「千と千尋の神隠し」において、『社会に名前を奪われた少女が、自分の名前を取り戻すまで』を描くことに参加していたけれど、この映画ではその逆、あるいはその先の世界として、「社会参加によって、新しい名前と命を手に入れる」というプロフェッショナリズムを、1年というタイムラインを駆使して表現しているのがすげえなあ、と思った。

すっかりドはまりしてしまい、高坂監督の舞台挨拶&トークショーに行き、有楽町マルイでやってた原画展も観に行ったぞ。写真はそれです。

最初ガラガラだった劇場は2回目には倍になり、3回目はバルト9の400席が満員(夜なのに)になっててびびった。
初回ガラガラだったときは、とっても良い映画なのに人が入らなくて一瞬で終わってしまった片渕須直監督の「マイマイ新子と千年の魔法」を思い出して悔しい気持ちになったので、その2ヶ月後、韓国の映画祭で2人並んで笑っている高坂監督と片渕監督の写真をTwitterで見掛けて嬉しくなりました。

おまけ:俺の中でワースト1位の作品のこと


(※自分の好みでなかった映画をわざわざディスるのは好みではないので、一部モザイク処理をしています。ご了承ください)

通常あまり好きじゃなかった映画についてわざわざ貶すことを書くことは好きではなく、そういうのを書くことも滅多にないし、だいたい人の好みなんて多様性があって然るべきだと思っているし、好きなものの後に嫌いなものを載せるのもなあ、とも思うんだけども、こればっかりは言わせていただきたい。

とあるアニメ映画なんですけど、これ、どうしたよ……

いや、前の作品の時点でいかんなあ、商業化の闇だなあ、っていう徴候はあったよ。
でも、10年以上前から好きだった監督で、直近過去4作家族で劇場で観てきたわけですよ。

ここ数年でぶっちぎりのワースト候補でございます。
なんだろう。俺にはホラー映画に見えた。ヒューマンホラー、サイコホラーっていうの?
怖い怖い怖い怖い。そもそも、タイトルからしておかしくね?映画の内容と合ってないし。

まったく愛を感じられない人物像、生活の香りがしない家、悪意に満ち溢れた妻との会話も、謎の長回しカットも、とって付けたようでまるで合ってない主人公の声と演技、突如挟み込まれる性癖とか、突然ぶっこまれる大人と日テレの事情が見え隠れる感動シーンとか、めっちゃ怖えええ!!!

監督、家庭大丈夫なのか?

と思いました。

というわけで、2018年を代表するアニメ映画を観たい!というときにはその前の4作品をオススメしております。

以上です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました