重厚長大戦艦大和系企業から降りる話

 読んだ。

富士通を退職した話

新卒さんの増田を読んだはずなのに、教科書に載ってる何十回と読んだ古典を読み返したような読後感。

2016/04/13 09:08

 うん。

わかる。
わかるよ。
わかります。
わかるとも。わかれば。わかるっつってんだろわかれよ。

 

いや、俺はFさんと直接の関係があるわけじゃないので、Fさんについてどうこう言う身分には無いのですが、あるあるネタすぎてコメントするにももうテレパシーで伝わってくれよレベルの話なわけですよ。

で、そういう人が山ほどいるから、みんないっちょかみしたくて燃える燃える。

※まあ、タイトルを「某H社を退職した 拝承」に変えても、「Nの会社を辞めたでござーる」に変えてもだいたい通じるような気がするんですが。

 

ここまでがコメントで、以下自分語り。
増田とはあまり関係無いかもしれない。

 

俺は以前大メーカーさんと繋がりの深い会社に居たし、今の職場にもFさんの基幹屋さんがたくさん常駐してたりするんで、この雰囲気はだいたいわかる。COBOLネタも、Excelネタも文字通り定番の話題だと思うし、なんか新しい案件があるたびに営業さん課長さん部長さんSEさん以下10人くらいの大名行列状態で100ページくらいあるパワポに「グループの総力でワンストップのトータルソリューションを~」とか書いてある会社説明から始まる重厚長大なトークを聞かされたりすると、「ああ、安心な日本だなあ」などと謎の郷愁すら感じてしまう。

 

俺はメーカー出身の人間ではないけれども、ある意味この会社以上にこれっぽい会社、つかほぼ役所、ていう感じの会社で20代を過ごした。育った、あるいは育ててもらった、と言ってもいいと思う。

で、辞めた。

だから、この人の言っていることは共感できるところも、若さ故の過ちというものを修正してやりたいと思う気持ちも、全てひっくるめてとってもよくわかる。

ブコメで「青い、甘い、まだ早い」「とっとと辞めたほうがいい」「F相変わらずだな」というコメントがそれぞれ並ぶのも、もはや伝統芸能のように見える。

むしろ、俺はこの人のように優秀な経歴を持つ学生だった人間ではないので、見栄えの良い学歴と多少覚えのあるスキルで渡っていけるというところは、素直に羨ましいと思ってしまう。

 

この人が「ITの世界」にあこがれて大企業に入り、それはIT違いだよっていうようなミスマッチが発生した、っていうことがブコメでツッコまれまくっているけれども、昔も今も新卒ではよくあることだろう。

俺も、その言葉が世間一般に出始めたころ「インターネットとマルチメディアとコンテンツ」とかいう言葉にあこがれて日本で一番でかい通信会社に入った。後になってから振り返れば、「そりゃ、インターネット違いだろうよ」とツッコまれるのかもしれないけれど、俺の場合この人とは事情が違っていて、10代の頃にドロップアウトして「優秀な学生」という看板の付いたルートを思春期のうちに早々に落としてきてしまった自分にはそんな悠長なことを言っている余裕はなく、ただ生き残るために滑りこんだという感覚だったのだけれど。*1

 

朝、自転車に乗りながら赤信号でたまたま上の増田を読んで、ボーッと色々な考え事をしながら会社に向かっていたら、30分間ボーッとしたままふと気付いたら着いていた状態だった。

この人が思っていたようなことを考えていたときのこと、会社を辞めたときのこと、その後のこと。良かったこともあるし、失敗したと思っていることもある。どっちが良かったのかなぁー、なんてわからなくなることもあるけれど、ゲームのようにセーブポイントからルート分岐をやり直すことも2周目を試すこともできないので、それはもう考えても意味が無い。

 

でかい通信会社への入社当時、新人を待っていたのは案の定マルチメディアでもコンテンツでもなくて、電話とExcelとパワポと手書きのオーダー、あとはハンコをつく欄が10個くらいありそうな稟議書の束だった。インターネットと言えばせいぜいヤマハかCiscoのルータに向かってping 192.168.xxx.xxxを打ちまくっていたくらいのものだ。

がっかりもしたし、絶望もしたし、上司とぶつかることもあったけれど、でも、結局この会社は俺にとって嫌な思い出になることは一度も無かった。むしろ、落ちこぼれだった俺に社会の仕組みを一から教えてくれたこと、一般的な会社員に必要な知識と技術を何から何まで勉強させてくれたこと、何不自由ない生活ができたこと、大切な仲間がたくさんできたこと、得られるものは山ほどあった。大学に行っていない俺にとって、あの会社は大学そのものだった。良くも悪くもそんな感じだった。とても楽しかった(しかも、かなりの給料をもらえる)。今でも本気で感謝している。むしろ、感謝しかない。

ただ、インターネットとマルチメディアとコンテンツ、が無かった。

本社でそこそこ重要な仕事を任されるようになったころには俺には家族があって、小学生になる2人の子どももいたし、家はそこそこゼイタクな社宅だったし、カッコ悪いんだけども会社を辞めるときは正直死ぬほど悩んだ。

でも、残念ながら人生は一度しか無いし、社会人としてのキャリアとか、自分がやりたいことはなんだっけ、っていうことに嘘を付けないと思ったら、試さない後悔はできないと思った。だから、辞めた。

というわけで、俺の場合、現状に不満があって転職したわけでは無かったし、見栄えのいい学歴も突出した専門技術があったわけでも無かったので、そんな派手な引き合いがあったわけではなく、周囲から見たらわけがわからないとしか言われなかった。
まず辞める人があまりいなかったし、転職していく人はバリューを気にして名だたる大企業や派手なメディア系なんかに出て行くケースがほとんどで、わざわざ地味な事業会社に移ろうなんて人はいなかったから、転職先ですら何考えてんの?と笑われてばかりだった。

※でも考えてちょっと考えてみてほしい。例えばITの仕事を好きなようにするとしたら、SIerや法人営業や単機能の開発をするのもいいかもしれないけど、自分がITを行使してサービス考えるほうが楽しそうじゃない。

 

当然、世の中そんな甘くないっつーか、良いことばかりあったわけじゃなく。
めちゃくちゃ給料は減ったし、めちゃくちゃ休日も減ったし、死ぬほど生活が苦しくなった。今この瞬間もぶっちゃけ死ぬほど苦しい。ITのことを専門でやっている組織じゃないから、そもそも自分の仕事をする前になぜその仕事をするのかを説明する手間も増えた。自分の土地を作るにはまず荒野を耕さなければならないのだ。

包み隠さず書くと、家族のことを考えて、いまだに後悔することもある。人として、父親としてはまったくダメな選択をしたなって思ってしまうこともあるし、だったら何度でもチャレンジしなおせばいいじゃない!とか起業しろよ!とかツッコまれてもそうそうそうはいかない自分にガッカリしてしまうこともある。でも、自分で選んだ仕事はそこそこ楽しい。
自分で考えて、自分の手で作ったサービスが世の中に出て、「便利だね」って言ってくれる誰かの声が届くということはこの上なく幸せなことだ。大げさではなく、ああ、この世界のために何かできることがあるんだ、っていう気がする。それを実感できるっていうだけでも、良かったかな、っていうのは思う。

 

自転車に乗りながら、どっちが良かったのかなぁー、なんて考えてもどうしようもないことを考えてた。
今になってみると、あの頃のギラギラカリカリしていた思いを忘れそうになり、自分の時間がたっぷり取れて、暮らしに余裕があって、妻と子どもたちにも好きなことをさせてあげられるならもうそれで良かったんじゃない、なんて思ってしまうこともある。あの時、妻に「あんたの仕事なんてなんでもいい」と言われてムッとしたことを思い出しながら、ああ、そうだよねってこの歳になって納得してしまう瞬間もある。

そうやって、仕事なんてなんでもいいや、年休を取って、子どもたちと旅行に行こう、自転車に乗って、山にも行って、楽器を習って、それでいいや……
……という選択だったらどうだったのだろう。それって幸せだったのかな?
ということを考えていてふと気付いたら、九段坂を登り切って市ヶ谷の駅まで降りていた。超絶危ない。ボーッとしていて、東大の入学式で武道館前がごった返していたっけ?くらいのことしか覚えていなかった。

いやいや、でもたぶん、結局はそういう選択はしなかったし、できなかったのだろう。納得出来ない自分のキャリアに我慢しても、きっとそっちのほうが後悔がでかかったのだろう。だから、これで良かったのだと思うしかない。

 

かの増田の若者は、「無駄にした時間は返ってこない」「時間を無駄にすることが無いように」と書いている。社会勉強だと思って3年位貰えるものだけ貰っときゃいいんじゃないの、って思う部分もあるし、これから長い将来の安定やら何やらのことはあるにしてもなお、今独り身で、まだこれからキャリアを積む人なのであれば、時間を無駄にしないようにするっていう選択は否定のしようが無いと思う。「自分が作った」という手応えを、生きる意味だと考えている人種なのであれば、その手応えを得るために飛び出して行くべきだ。

そういう意味では、クラシックなでかい会社で納得しながらある程度踏みとどまって、無駄な時間なんて無かったと思いながら自分で新たなキャリアを選択しなおすことができた自分はかなり恵まれているのだろう。

それでもやはりインターネットでコンテンツなキラキラワールドで活躍するには遅すぎたし、選んだ道も中途半端な選択になってしまった、と自分を戒めたくならないわけではないけれど、でも、後悔しないように自分を信じてやるしかない。

やりたいことがあるなら、それをやるべきだ。
やりたいことは本当にそれだっけ?っていうのは確認したほうがいいけれど。

どっちにせよ、自分で考えて選んで生きるしかない。

*1:ちなみに、「電話屋じゃ全然違ぇよわかるとか言ってんじゃねーよ」と言われる方のために補足しますと、私はその会社に在籍中はネットワークとか設備じゃなくて、SI⇒ネット系会社への出向⇒IT企画というその会社の中では若干特殊なキャリアだったのですよ。

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