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自転車乗りが観る「青春100キロ」

P5132994.JPG5月13日、金曜日。
久しぶりに、渋谷のアップリンクへひとり単館チックな映画を観に行った。

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「青春100キロ」この日が公開最終日。
フライヤーが右下の隅っこに地味に貼られているが、満員御礼である。
最終日だったせいもあるかもしれないけれど、公開中全日満員だった。本当は前日の木曜日に行こうと思ってたんだけど、満員で入れないと聞いたので慌ててネットでチケットを買った。一番前の真ん中の椅子。

・青春100キロという映画について




「監督失格」の平野勝之監督、5年ぶりの劇場公開作。R18指定のエロ映画である。ただし、平野監督のファンなら知ってのとおり、エロシーンはほぼ皆無なのでそれに期待してはならない。

映画は、2015年末で引退する人気AV女優の上原亜衣さんの引退作品の一つを平野監督が急遽撮ることになり制作されたもので、引退作で最後に上原亜衣とセックスしたい企画に応募した素人が、「撮影スタジオのある山中湖まで100キロ走れば生中出しできる」という条件でただひたすら100キロ走って目指すだけ、という、一見読んでも文字に起こしてもしょーもない感じの、そんなロードムービーである。

俺はまるっきりエロ方面に造詣が無く、かつ方々で「エロさが全く無い」と叱られる草食野郎なので実は上原亜衣という女優さんのことをあまり知らず(スミマセン)、エロサブカル方面のカルチャーを正しく評価することができるのかどうかについては不安がある。

だけど、平野監督は好きなのだ。理由はいくつかあるけれど、監督が濃厚な自転車乗りだということが大きい。
平野監督は今はなき神田アルプスの熱烈なファンで、ランドナーやパスハンターを何台か所有している。
わりと最近残念ながら休刊してしまったけど、「自転車人」というヤマケイが出しているシブい自転車雑誌があって、俺はこの、カラフルなウェアも女子も出てこず、おっさん達が淡々と(ヤマケイのあのノリで)ロングツーリングする記事が乗っている雑誌が大好きで毎号欠かさず買っていたのだけれど、そこに平野監督が毎号濃ゆいランドナーの読み物を4ページくらい掲載していて、その記事が非常に枯れているのにエロく、クッソシブいのにエモく、なかなかに味わい深かったのである。

監督の以前の映像作品も、自転車乗り特有の旅感が強く感じられるのだ。だから、この人が撮る「大好きなAV女優と生中出しのために100キロ走る」というしょうもないロードムービーも、きっとエモくて面白いに決まっているのだ。

P5133005.JPGアップリンクは40席ちょっとのミニシアターなので、一番前の席だとほぼ寝て観る状態でなかなかいい。

客層は上原亜衣ファンの非モテエロ野郎ども……ではなくて、ここは実にここらしく、サブカルチックなファッションのオシャレなカポーが多い。ばくはつするがいい。
10代20代の頃はこのへんのミニシアターに入るとワクワクしたのけれど、なんか落ち着かなくて自分がおっさんになったことを思い知らされる。飯田橋のギンレイとかの名画座のほうが落ち着くのである。

 

・観てきた感想


最高だった。

いやー、期待は全く裏切られず、とても面白かった。青春だった。

ストーリーは新宿の都庁前から始まる。ケイ君という素人さんがただひたすら走るところを撮るだけの映画で、実際に「これ、面白い絵になるのか!?」と制作陣が悩みながら行き当たりばったりで撮っているのだけれど、その、ただひとつのバカバカしいがド直球な希望のために走り続けるケイ君が真っ直ぐで飾りがなく、熱くて面白い。なぜか清々しさすらある。

アルプスに乗って並走する平野監督との掛け合いも最高だ。
ケイ君がまさかの迷子になって「俺がヤるのか?」と心配したり、面白い絵を撮るために一芸を入れさせようとしたり、不器用に走るケイ君と監督のテキトーさの対象がコントになっていて飽きない。映画として制作されてはいるけれど、映像のフォーマットがまんまAV(テロップとか、モザイクとか)なのも妙におかしい。

しかし、そこは100キロ。しかも、コースはひたすら20号を真っ直ぐ行った後、町街経由で413号道志みち、真冬の山伏峠は相当キツい。だんだん脚が痛くなり走れなくなりつつもひたすら100キロを目指すケイ君が、なぜかまさかやたらカッコよく見えてくるから不思議だ。
「大丈夫か、勃つか!?」「絶対勃ちます!」
という、どうしようもないやり取りが堪らないのだが、「憧れのAV女優に会ってセックスする」という目的のためだけに超ポジティブな青年と、そんな青年をお構いなしに自転車で気持よく走ることを考えている監督のコンビが素晴らしく、これぞまさにロードムービーだった。

編集もとても冴えていて、最後の一仕事に「皆が満足して帰ってもらえるように」と思い臨む上原亜衣がまたもう一つの青春として描かれていて、とても真摯で、かわいらしくて、それは人気も出るだろうなと思った。
「愛されたくてこの仕事をしている」「忘れられたくない」と涙ながらに語る女優と、「会えて最高っす」とひたすらニコニコしているケイ君のコントラストが印象的で、最後に「(ケイ君が)一番私の顔をしっかり見てくれた」と語る上原亜衣の言葉にはなぜかジーンと来てしまった。
終始笑いが絶えない館内だったけれど、最後は皆で盛大に拍手した。
こうやって観た人の一体感ができる作品っていい。

一見くだらなくてしょーもない題材の撮りっぱなし映像だけど、そんな飾らないピュアな欲にこそ青春がある、そんなことを思わされるとても良い映画。後で監督が「編集は地獄だった」と語っていたけれど、映画の力が詰まった作品だった。大人気で6月4日からまた2週間の再々上映が決定したそうなので、興味のある方はためらわずに観に行くと良いと思います。

 

・トークショーとか


最終日ということで、終了後に舞台挨拶があった。平野監督と、ゲストにブロガーのはせおやさいさんが来ていた。

平野監督は映画のまんまのノリで現れ、トークもヒジョーに面白い人だった。舞台挨拶があると思わなかったので、最終日に来て良かったよ。少しだったけど、自転車話も聞けて嬉しかったです。
はせおやさいさんはイラストのイメージより目鼻立ちのくっきりとした美人な方でした。

P5133010-ANIMATION.gif平野監督によるコッペパンの食べ方実演。どんどん撮影してシェアしてね、ということで撮影。
クリックするとアニメーションします。
さすが、映画を撮る人である。サービス精神旺盛である。あと、このTシャツいいな。欲しい。

結構長いこと質問を受け付けていて、そのやり取りもとても面白かった。
皆、当然ケイ君のことや聞きたい下ネタをしっかり質問していた。俺はアルプスについて色々聞きたかったのだけれど、館内で約1名かもしれない自転車クラスタからやってきた者の質問で周囲が引くのもつまらないので控えていた。
のだけれど、「自転車の話をし出すと長い」と自ら語っていたので、連載読んでましたよと声を掛けさせていただいたところ、ランドナー話が始まって司会の人に遮られることになっていた。

マニアックな話を振った最前列の自転車乗りは私です皆様大変失礼しました。

P5133034.JPGアップリンクの入り口に無造作に止められていた、平野監督のアルプス・スーパークライマー。
雑誌で何度か見たし、映画で乗っていたのもこれだ。確か、9kgちょっとの超軽量パスハンだったはずだ。パーツ群も抜かりない。

この自転車については自転車人のムックに詳しく載っている。


アルプスを眺めた後、平野監督に少しだけ自転車話を聞けた。とても楽しかった。
P5133036.JPG青春100キロは全然エロさが足りないエロ映画で、いや違うな、オカズにはならないが人間のエロさがあるとてもいい青春ロードムービー。

でも、自転車乗りには「これは自転車乗りが撮ったな」と感じる。
目的のシンプルさとか、行き当たりばったりの妙とか、坂の魅力とか、沿道への視線とか、そういうものがまるっきり自転車乗りのそれなんだよね。もちろん、自転車乗りやランナーじゃなくても全然楽しめるけど、自転車乗り独特の感慨がある気がする。


あと、個人的には作中ずっと映しだされている景色がずっと俺のホームとも言えるコースだったので共感度がすごく高かった。
数年前毎日ジテツーしていた20号を下り、勝手知ったる町田街道を曲がり、413の川尻交差点で道志みちに入って1日が終わる。監督が気持ちよ~く下っていた三ケ木の交差点の坂道は先週走ったばかりだし、道志みちも年1回くらいは登っている。だから、なおさら。
観てよかった。

▼はせおやさいさんの詳細で素敵なレポート。
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